「東京ひとり勝ち」を脱して生き残れ!「地方都市の持続可能性-「東京ひとり勝ち」を超えて」が考える都市の価値とは


人口減少社会の到来を目前に控える現代日本。
それでいながら、東京及びその近辺地域に限っては人口増加の一途をたどっています。

増える都市あれば、減る都市あり。
対の関係にあたる両者ですが、増える都市と減る都市の数のバランスはとれていません。

このいびつなバランス関係は、双方に問題を引き起こします。
今後都市は、いずれの側も共に潰れてしまうこととなるでしょう。

最悪の事態を避けるため、各都市はこぞって生存戦略に取り組みます。
このとき、都市に求められているもの、それこそが都市の価値なのです。

本記事は、我が国の都市の現状と今後に対する助言を与える本を、ご紹介します。

スポンサーリンク

「地方都市の持続可能性」について

2018年、株式会社筑摩書房発行の「地方都市の持続可能性-「東京ひとり勝ち」を超えて」。
これからの地方都市の展望を検討する内容を述べた新書です。

人口減少社会を迎える日本における、各都市の状況と今後を論じる本書。
国勢調査などのデータに基づき、人口やその増加率、昼夜人口比率などを分析しています。

人口減少が止まらない地方都市に対し、ひとり勝ち状態の東京。
この状況は、歴史的に見て国の影響を多分に受けた結果だと述べています。

そんな地方都市衰退の原因と、生き残りをかけた様々な取り組みの事例紹介。
本書はこの部分に重きを置いています。

著者の田村秀氏は、かつて官僚として地方自治に直接携わってきたスペシャリスト。
国と地方の現場を知る氏は、さすがに国政や地方政治の見地にも明るい印象です。

確実に直面する難題への予習として、地方自治を知りたい人にとっては最適の一冊といえます。

「地方都市の持続可能性」とは何か

本書は東京の存在を、地方都市の対極にあるものとしています。
廃れゆく地方都市に対し、成長と価値向上を続ける東京という対比構造です。

ここで誤解してはいけないのは、本書が主眼を置いているのはあくまで地方都市だということ。
地方都市が潜在的に抱えるリスクと、これからの生存戦略について論じています。

加えて、本書は東京を現代都市の在るべき姿として捉えていません。
最後の部分で、東京という大都市の抱えるリスクと、地方との共生について触れています。

国土の大半を占める地方の市町村なくして、この国は維持できません。
それでは、本書が示す地方都市の持続可能性をみてみましょう。

「東京ひとり勝ち」の状況

本書の序盤は、様々なデータを用いて、都市の価値や豊かさとは何なのかを投げかけます。

例えば、人口が多くとも大多数が後期高齢者の都市を、豊かだと思う人は多くはいないでしょう。
あるいは、人口が多く増え続けている都市は、必ずしも豊かだと言いきれるでしょうか。

このように、何を基準とするかで、都市の価値はいかようにも変わるのです。

絶対的基準がない中で、著者は極力客観的データに基づいた比較分析を行っています。
そうして様々な観点で比較した結果こそが、「東京ひとり勝ち」という現状でした。

人口のみならず、多くの企業本社が軒を連ねる東京。
中でも、千代田区や港区などは突出した数値を叩き出しています。
企業の多い大都市は安定して税収が上がるため、健全な財政状況を保つことができるのです。

とはいえ、なにも横浜や大阪が厳しい自治体運営に直面しているわけではありません。
東京23区が各指標において圧倒的な伸び率を示したため、ひとり勝ちなのです。

東京の人口増加を挙げましたが、全体的に見れば日本は人口減少傾向。
そしてこの人口減少の速度が導き出す市町村の将来予想は、衝撃的なものでした。
2040年には2014年の市町村数の半数以下になるというのです。

東京はじめ、一定の都市への人口集中は止まりません。
現行の地方自治では立ち行かなくなる状況が、いよいよ現実味を帯びてきているのです。

だからといって、地方都市はただ指をくわえて未来を待っているわけではありません。
生き残りを賭けて様々な取り組みを方策することでしょう。

「東京ひとり勝ち」である以上、地方の市町村は常にこのリスクにさらされています。
しかもそれは今現在に限らず、昔から続いてきた話です。

裏を返せば、日本各地には都市再興の取組の先例があるということ。
ケースバイケースではありますが、成功例も失敗例もそこかしこにあるのです。

以降本書は、地方都市の実例を、多くのページを割いて解説していきます。

都市は国に振り回される

実例紹介の前に本書が述べるのは、都市と国との関係についてです。

本書が言うには、都市は国の政策に一喜一憂してきた歴史と共にあるとのこと。
それも、遡ること江戸時代の頃からというのには驚かされました。

新潟や金沢などの日本海側の都市は、北海道からの海運航路の関係で発展を遂げます。
佐渡島や石見は、金山や銀山で栄えました。
福岡の筑豊炭田などは、エネルギー資源が石炭の頃は栄えるも、石油に代わると途端に旧転落。
軍港都市として栄えた呉や佐世保は、かつての勢いはありません。

国策の関係で、都市は振り回され続けてきました。
そして、国が手を引いた後の未来は、自らの手で築き上げていかなければなりません。
好き放題やってあとはお任せ、という国の態度は、印象最悪ともいえます。

本書では直接的には述べられていませんが、自治体運営と国介入の相性は最悪です。
環境や地域特性を理解しない上からの物言いは、そもそも市町村再建に寄与しません。

このあたりの話は、その後の実例紹介からもわかります。
著者の論調はまさにこの点を含んでいるものと言えるでしょう。

そして自治体側もまた、過去の反省から学ばなければなりません。
テンプレートにはめ込んで取り組んだところで、失敗は目に見えているのです。

本書は、地方自治に関する大切な視点を与える、貴重な一冊といえます。
特に国や都道府県との関係は、政治的見地において重要なポイントです。

生まれ育った街を良くしたい、活気あふれる市にしたいと言うだけなら、簡単でしょう。
そう言って住民の上に立つ者は当然、市町村運営の特殊性を承知しておかなければなりません。

しかも、本書が取り上げているのは、人口減少における市町村改革の必要性。
全ての市町村が必ず直面する事態です。
そう考えれば、本書は地方自治を志す者にとって必読の一冊といえます。

競い合う都市、そして東京

先に、本書は大部分を地方都市再生の事例紹介に充てていると述べました。
それらの事例は、いくつかに大別することができます。

主なものとしては、企業誘致の成功や地元特性をアピールして生き延びてきた都市。
あるいは、歴史的因縁があり、競い合ってきた都市同士など。
これらの成功例と失敗例の両方を網羅的に掲載しています。
そして、両方の事例を載せることで、過去の反省と教訓を教えてくれるのです。

市町村再建は、ある意味国の政策立案より難しいでしょう。
境を隔てた自治体同士のような、関係性という要素が付いて回るからです。
国のような、並び立つものがない者の方策は参考にはできません。

生き残るため、市町村は絶えず考え続ける必要があります。
近隣自治体の妙案如何では、影響のあおりを受けて潰されるか飲み込まれてしまうからです。
その点では、今の市町村は互いに競い合っているといえます。

歴史的背景も踏まえていたため、本書は特に市同士のライバル関係を挙げていました。
ですが、これからの時代はむしろ、地方都市と東京の対立構図になっていくことでしょう。
東京から人を引きはがし、元の街に戻ったり、気に入った土地を見つけてもらう取組が重要です。

後に解説しますが、過度な人口集中はそれ自体が都市の脆弱性を招きます。
今は都市間の競争はあっても問題はないでしょう。
しかし、近い未来を考えれば、東京と地方都市はいずれ手を取り合う必要があると考えます。

そのために各市町村は、自力を蓄えていかなければなりません。
市町村においても、強みを積極的にアピールし、フォロワーを増やしていくことが重要なのです。
フォロワーが住民となってくれた際は、望外の喜びを感じられることでしょう。

単に予算を使うだけでなく、低コストのアイディア勝負で戦うもまた戦略。
各都市には各都市の戦い方があるのです。
そのことを理解するための導入として、本書はおすすめできる内容となっています。

変わりゆく都市の価値

地方都市が人口減少の波に持ちこたえていくためのヒントの付与。
そのために本書は、これまでの諸都市の取り組み事例を紹介してきました。

市町村の取組は、自分たちの価値を再度認識し、高めていくことから始めます。
これこそが、再建のための第一歩なのです。
再建がいったん好調に転じれば、持っている価値はさらに高まっていきます。

さて、必死にサバイバルする地方都市に対し、東京はどうでしょうか。

実は東京も、あぐらをかいて高みの見物をしていられるほど余裕はないのです。

知ってのとおり、東京にはヒト・モノ・カネが集中しています。
一方で、台風や雪のときの電車運休のように、災害にめっぽう弱いのも周知の事実。
この災害における脆弱性への対処が、東京の生命線なのです。

災害が東京を直撃すれば、人的被害も経済損失も計り知れない規模となるでしょう。
過度の集中が裏目に出てしまうのです。

災害リスクについては、度重なる経験を経て重々理解しているはず。
にもかかわらず、東京は相変わらず一切合切を集めています。

本社を地方に移せば、その分人は東京を出ますし、被害も多少抑えられることでしょう。
役所も同様、中央省庁などの国権の中枢を地方に移せばよいのです。
しかし、首都機能移転はかつて閣議決定までされているのに、一向に進みません。

これが価値ある都市だと言ってよいものでしょうか。
逆に言えば、東京が示してきた都市の価値というものは、もはや過去の物なのかもしれません。

本書は最後に、東京の抱えるリスクをはっきりと明記しています。
そして、都市に対する価値観の変化をほのめかしているのです。

今こそ地方都市が立ち上がるときかもしれません。

おわりに

これほどまでに集中化を見せる東京。
しかし、その栄華はわずかにほころび始めていると感じています。

他ならぬ自身が、東京に価値を見出せなくなったからです。

かつては東京にあこがれた時期がありました。
そんな中、実際に東京に住んでいたことがあります。
しかし、通勤が楽という理由で借りた1Kマンションは、2年の契約満了をもって引っ越しました。

実際に生活してみたことで痛感したのは、スピード感が致命的に合わなかったこと。
そこで出た「東京は住める場所じゃない」という結論はまさに、価値観のブレイクスルーでした。

今後も経済的な豊かさをメイン指標にし続けるような都市は、ダメになります。
言い換えれば、それ以外の価値指標が求められる地方都市は、図らずも今がチャンスなのです。

我が街も、これからのサバイバルを生き抜いていってほしいと思います。
そのためなら、多少の支援は惜しまない所存です。


スポンサーリンク