廃墟写真集「廃墟サンクチュアリ」に見る自然に戻っていく廃墟の姿


廃墟を見ると自分の心の中にある思い出の世界が、強く刺激されることはありませんか?

栄えていた時の姿を失いながら壊れていく廃墟は、時が過ぎる残酷さと儚さをどこか合わせ持っています。

輝くような美しい時間があったとしても、もうその頃には戻れない。
廃墟を見ると、そう感じられるものがあります。

今回ご紹介したい「廃墟サンクチュアリ」は廃墟にほんの少しの切なさと、昔への憧憬を抱かせるような趣のある写真集です。

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「廃墟サンクチュアリ」について

「廃墟サンクチュアリ」は、2012年6月に二見書房から刊行された写真集です。
陰を帯びた雰囲気で、撮影されることが多い廃墟。時代に取り残された亡骸に光をあて、「サンクチュアリ」の如くに廃墟を神々しさのある空間として撮っています。

作者である三五繭夢(サンゴマユム)さんは、廃墟写真を上梓する写真家の中では珍しい女性写真家です。
男性写真家による廃墟写真集と異なり、三五繭夢さんの手で撮影された廃墟写真は繊細で光の柔らかさが上手に使われています。
「廃墟サンクチュアリ」は廃墟の特徴の一つである幻想性の表現度も高く、廃墟の異空間性を愛する人なら即お気に入りの一冊となるでしょう。

白い光があたる表紙の廃墟写真からはじまり、清らかな美しさのある廃墟の姿をじっくり堪能することができます。

自然と融合し消えていく廃墟

写真集の中の廃墟たちは、かつて人の手により作られ一時的にでも栄えた時がありました。

現在は管理してくれる人々がいなくなったために、この世から完全に崩壊して去るのを待っているだけです。
廃墟たちは少しずつ荒れて壊れていきながら、自然に侵食され否応なく融合される。物静かに終わりを待つ廃墟たちを、三五繭夢さんは厳かなものとして写真に残しています。

楽しかった時間や幸せだった時間もあっただろうに、その時間は過ぎて人に振り返られずに朽ちていく。
抗わずに全てを悟り受け入れるように、自然と融合し消えていく廃墟たちに何とも言えない気持ちになるでしょう。

自然に呑まれていく廃墟たちの姿は、役目を終えた命が自然に迎え入れられ救済されているようにも見えます。

人から用済みとされた廃墟が、自然に侵食され永遠の眠りにつく。
廃墟に救いがもたらされることで、「廃墟サンクチュアリ」に出る廃墟たちは神々しさを持っているのでしょう。

切なさより懐かしい

廃墟を見ると切ないと感じることがありますが、「廃墟サンクチュアリ」はどちらかと言うと懐かしさを感じます。
光を取り入れて撮影した廃墟写真は、深い廃墟の闇が取り除かれています。
闇が薄れているので「廃墟サンクチュアリ」の写真は、見る人が廃墟に対して共感しやすい作りになっています。

「昔はこの廃墟で人が働いていたり人が暮らしていたのだろうに、その人たちは一体どこへ行ってしまったのだろう?」
「この廃墟は荒れ果てる前は、どんな風だったのだろう?」

など、写真の廃墟について考える内に自分の中にある過去の記憶も引き出されていくような感覚さえ覚えます。

写真を通して自分の記憶も思い出される「廃墟サンクチュアリ」。
明るさを含んだ廃墟写真を見て、あなたも次第に写真に懐かしさを覚えるでしょう。

おわりに

懐かしいという感情は悪いものではなく、心の癒しになるものでもあります。
心が疲れてしまったら、「廃墟サンクチュアリ」の廃墟写真を見てみましょう。

自分の思い出も連動して、廃墟写真をきっと懐かしいと感じるでしょう。昔の幸せだった時間、楽しかった時間も思い出し、心を温めてもらえます。
「廃墟サンクチュアリ」の作者・三五繭夢さんの写真をもっと見てみたいと思ったら、「廃墟ノスタルジア」もおすすめです。三五繭夢さんの撮る廃墟写真で、廃墟の魅力に引き込まれてみてください。


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