心の病みと日常生活の笑いが混ざった不思議エッセイ漫画「幽玄漫玉日記」


現代日本で急増している心の病「うつ病」。うつ病にかかり苦しんでいる人は多く、漫画家の桜玉吉さんもその一人です。ギャグ漫画家で人を笑わす職業に就きつつ、うつ病を抱える桜玉吉さんが発症後に発表した漫画は明るさと暗さが混在した不思議さがあります。

今回ご紹介する「幽玄漫玉日記」はうつ病治療の後に連載したエッセイ漫画で、コメディ調で描かれながら所々にうつ病の陰が潜んでいる作品。笑わせるストーリーの中に混じる作者の心の苦しみが、エッセイ漫画に重みを与え印象深いです。

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幽玄漫玉日記の紹介

「幽玄漫玉日記」は1998年から月刊コミックビームで連載されていた作品です。同誌で以前に「防衛漫玉日記」を連載していて、終了後しばらく休筆していた作者の復帰作になります。桜玉吉さんの得意とするネガティブを笑いに換える要素が活かされており、日常生活で起こる困難な状況も、コメディ風に語り暗さを感じさせない。

桜玉吉さんは「防衛漫玉日記」連載が終わった後に「うつ病」と病院で診断され、心に元気がない状態でした。治療して心の状態が戻って本作を開始しても、病の影響を引きずってか漫画に度々シリアスな雰囲気が漂っています。絵も普通のイラスト風から水彩画風に変わるなど、心の状態に左右されてか表現方法が時々変化。特にうつ病が再発していく物語後半では、桜玉吉さんの心の状態が痛々しいです。

本の内容について

うつ病改善のために健康生活を心がけ薬も必要なくなり、前のように心が元気になった桜玉吉さん。さあ、お仕事復帰と前向きになったが、漫画家生活はうつ病にかかりやすい仕事環境と気づいてしまいます。漫画家を辞めようかなと悩んでいた作者に、彼の担当経験もある編集者ヒロポンからアドバイスがあり自分の会社を設立。

桜玉吉さんの漫画活動をサポートする会社を自分で起こし、漫画家業に励もうと色々頑張ります。作者が起こした有限会社「玉屋」。玉屋の開業や一連の活動にまつわるドタバタが、エッセイ漫画として面白おかしく描かれる。

玉屋の会社活動は漫画編集者からのコネでお店を出したり同人誌を出したり、お世話になっている出版社の株を買い儲けようとしたりと様々です。でも上手くことは運ばすお店が軌道に乗りかけたら、間借りしていたお店が閉店のため終了。同人誌はそこそこ売れても、自分個人で漫画を描いてお給料をもらう方が良い程度。買った株は上がったり下がったりと、中々大儲けまではいきません。作者や会社の運営を助けてくれている編集者たちの一喜一憂のテンションが激しく、読者のテンションも引きずられそうです。

うつ病に翻弄される人たち

本作開始しばらくはうつ病も治まり安定していた桜玉吉さんですが、玉屋開業を提案した編集者ヒロポンがうつ病になったことが影響してか作者もまたうつ病を再発してしまいました。ヒロポンはマイペースで能天気そうな人だったのに、うつ病発症の回ではどんより表情も暗く別人。桜玉吉さんは精神がダウナー状態のヒロポンに、医者に行くように言います。

ヒロポンは助言通りに医者に行き処方された薬で、過剰に元気になり前以上にマイペースな行動をするが回復。ヒロポンが飲む薬は桜玉吉さんも使っていたもので、ヒロポンから薬を分けてもらってしまい作者も精神が過剰に元気になってしまいました。

桜玉吉さんのうつ病は再発後にまた治まったり悪化したりと、症状の具合がコロコロと変わる。精神を鍛えるために精神修行をし、他に本を読んだり音楽を聴いて気を紛らわすなど作者は自分でうつ病と向き合う努力をします。うつ病の根は深く治そうと色々しても、精神の落ち込みがなくならない。

うつ状態により自己を否定し死が頭をよぎっても、想う人がいるから死ねないともがく様子がリアルで作者の痛みが伝わります。

おわりに

作者のうつ病が背景にあるので、心の闇も反映されている「幽玄漫玉日記」。桜玉吉さんの会社活動で笑っていたのが、次第に露わになる作者の苦悩に終盤は胸が痛くなるでしょう。


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