妄想・現実ごちゃ交ぜ幻想的エッセイ漫画「御緩漫玉日記」


映画などで虚構と現実の光景をおり混ぜる演出方法がありますが、漫画でもそういった表現方法がされている作品があります。今回ご紹介する桜玉吉さんの「御緩漫玉日記」も作者の妄想と現実が交錯する内容で、幻想的な感覚のする変わったエッセイ漫画です。

作者が本当に体験したこと、作者が心の中で夢想したこと。妄想と現実はどこか曖昧に線引きされ、ゆるりとした桜玉吉さんの日常風景が語られます。

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御緩漫玉日記の内容紹介

「御緩漫玉日記」は作者の漫玉日記シリーズの3作目にあたり、月刊コミックビームの2003年11月号から連載されました。生活や仕事で色々あった桜玉吉さんが心機一転のためにか購入した伊豆にある一軒家に住まいを移してからの日常と、東京で仕事場を借りていた頃の思い出が描かれています。

登場人物や出来事に妄想が含まれており、本当にいる人や現実にあったことのように見せて実は違うのだという表現をして読者を翻弄する。桜玉吉さんはうつ病を抱えているので妄想と現実が絡み合う描写が上手く、作者の頭の中だけの夢話がやけにリアルです。イラストも桜玉吉さんの心の状態で画風がコロコロ変わり、同じタイトルなのに回ごとで違う漫画を読んでいるような気がしてきます。

環境の変化

離婚やうつ病発症と精神的に落ち込むことばかりあった作者。前々から伊豆で家を買うことに憧れついに理想の一軒家を見つけた桜玉吉さんは、本作連載前の休筆時に思い切って家を買ってしまいます。仕事をしていないので貯金頼みの作者に経済的余裕はなく、金融機関から融資してもらっての購入。

大胆な買い物になってしまいましたが、静かに暮らしたいと望んでいた桜玉吉さんには良い買い物だったのでしょう。融資を返すために漫画のお仕事を再開する気になり、停滞から一歩進むためのきっかけになりました。

伊豆での暮らしは雑音も騒音もあまりなく、無音の世界になることもあり作者の望む静かな生活が送れている。人との付き合いも少なく孤独に思える環境も、桜玉吉さんの心を休ませて穏やかにしてくれます。

作者は恋多き人らしい

桜玉吉さんは離婚後に気になる女性ができ、その人を自分のエッセイ漫画のキャラクターとして登場させたことがあります。「御緩漫玉日記」にも気になる女性キャラクターが出ていて、一時的に彼女と同居生活した話も描いています。伊豆に引っ越す前に東京で借りていた仕事場で、好きな女性と暮らし一緒にいる未来を妄想する。同居の経緯は女性の住むアパートが立ち退きになり、行先が決まっていない彼女に家に来るかと作者が声をかけたから。

女性は桜玉吉さんと恋人だったのか、明確には示されていません。困ったことを相談できる位だから、ある程度の親しい仲だったのかもしれない。好きな人と暮らせること、にポジティブな気分になった桜玉吉さん。希望の詰まった同居生活も1年未満で破綻し、別の町へ越す彼女を見送り終わってしまいます。

苦く終わった女性との恋の後、桜玉吉さんは別の人に恋をする。「脳内彼女」として実在しない形で出されましたが、本当は現実にお付き合いしていたようです。その人は桜玉吉さんの急病時に色々対応してくれ作者を助けますが、次の恋も失敗に終わり別れを告げることに。

どちらの女性も変わった雰囲気の人たちで、残念ながら桜玉吉さんの恋は良い結果を迎えられませんでした。

ネガティブの中に笑いを生む

本作は桜玉吉さんうつ症状が作風に影響し、暗さのあるエッセイ漫画です。桜玉吉さんはギャグ漫画家なので、ダウナーな雰囲気の中でも笑いを忘れていません。

自分のうつ病の症状がひどくなった時のやり過ごし方について、イラストかわいいデフォルメ調にしてコントチックに解説。急病のため病院で手術を受けた夜にお腹を切った痛みで起きられず、尿意を感じても対処できないトラブルを劇画でドラマチックに再現。実際に「御緩漫玉日記」でそのページを見れば、大変そうだなと思いながらイラストとセリフで笑いのツボを刺激されます。

おわりに

桜玉吉さんは長くうつ病に悩みながらも、現在も細々と漫画を描き続けています。「御緩漫玉日記」や他の漫玉日記シリーズを読むと、その人柄に愛着が湧き少しずつ前に進もうとする作者の道行きを最後まで見守りたくなるでしょう。


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