クレイジーな世界が好きな人におすすめな平野夢明「メルキオールの惨劇」


世界観がクレイジーなホラー作家として有名な平野夢明さん。彼の初期作品であり傑作ホラーの一つである「メルキオールの惨劇」を、今回はご紹介したいと思います。

不気味で不条理な設定でぐいぐい読者を引き込む手法は、本作品にも色濃く反映されています。母による子殺し事件の影に隠れた暗黒世界。最初はドン引きする場面もありますが、はまったら読み進める内に「メルキオールの惨劇」の虜です。

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「メルキオールの惨劇」のあらすじ

主人公は他人の不幸を集めるとんでもない悪趣味を持った老人・オギーに雇われ、人の不幸を蒐集する仕事をしている男・12(トゥエルブ)。今回の仕事は自分の幼い息子の首を切断し殺した女性について調べ、現在もまだ発見されていない殺された子どもの頭部を手に入れること。

12は仕事を成功させるためにターゲットの女性に近づき、懲役を終えた彼女が息子二人と住む家に侵入しました。息子たちはどちらも異様な雰囲気と風貌で、母親が犯した殺人には何やら裏がありそうです。母子三人としばらく一緒に生活していた12は、ある日息子の一人と雷に打たれてしまいます。

それを機に雷に打たれた息子の人格が変化し、彼らの家系にまつわる秘密と子殺しの真実が明らかになっていく。

タイトルにある「メルキオール」の存在が、物語の大きな鍵となっています。

設定も奇妙だがキャラがまた奇妙

物語の基本設定は人の不幸をほしがる老人のために、我が子を殺した母親から話を聞き出し遺品をもらうという奇妙なものです。

普通の思考では思いつかない設定に、平野夢明さんの鬼才ぶりが垣間見えます。
設定も奇妙でありますが、さらに話に登場するキャラがみんな奇妙です。

主人公12は他人の不幸を集める蒐集活動を生業にしていて、1日でもやれば鬱になりそうな業務に勤しんでいる。ターゲットに近づくためなら目的の人物が運転する車の前に飛び出し、当たり屋みたいなことまでするのです。

彼の雇い主である老人・オギーは他人に不幸を集めた博物館を持っていて、他人の不幸を求めている恐ろしい悪癖がある。見知らぬ子どもの頭部をもらい受けたいなど、オギー氏の感性は独特すぎます。

殺人者である母親と暮らす息子たち。長男は怪力で白痴であり、14歳になる次男の髪は白い。長男は元は優秀な頭脳を持っていたが、家系の体質的問題で狂人になってしまったのです。次男も昔の兄に似て天才的な頭脳の持ち主であり、保身のためには身内の命も奪えます。長男は雷に打たれたことで正気を取り戻し、幼児の頃にある罪を犯した弟を断罪しようとする。弟は予想以上に狡猾で、弟の行動ぶりには結構驚かされます。

話のキーワードとなる存在「メルキオール」は、この兄弟のどちらかが深く関わっています。

オカルト的伏線と迷信の悲劇

「メルキオールの惨劇」は物語の中にオカルトに関する情報が、そこかしこに盛り込まれています。「ムー」などのオカルト雑誌に心魅かれるタイプの人は、本作はとても楽しめる一冊になるでしょう。

オカルト的なネタとして母親の子殺しには、迷信めいたことが根底にあります。彼女が嫁いだ家は特殊な一族で、長男は天才に生まれるが15歳になると必ず狂人になり家は凡人の次男が継ぐことになっている。

彼女の夫は家を継いだ凡人の次男にあたり、再婚したため前妻の子も含め息子が3人いました。

長男はいずれ狂う。弟は凡人であるが、正気を保って生きていける。
上の兄が狂ったら、下に弟がいる次男もいずれ狂うのか?

狂人になることは回避するには、凡人の末子のある部分を食べれば良いのでは…。

生んだ母の手で殺されたとされる三男の死は、精神が狂うことを恐れる人間の業が招いたのでしょう。

おわりに

死体の切断などグロくて怖い要素がもりだくさんですが、読んでいくとだんだん病みつきになっていってしまいます。「メルキオールの惨劇」でクレイジーな世界を体験してみてください。


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