コンビニに希望と救いを与えられた女性の選ぶ人生は?「コンビニ人間」


文学賞の中でも知名度が高い芥川賞・直木賞に選ばれた小説は、一気に有名になり売り上げが伸びます。2016年に芥川賞を受賞した「コンビニ人間」も、受賞したことでベストセラーになりました。

コンビニ+人間のシンプルな言葉も、合体し、「コンビニ人間」になると不思議とインパクトが増し、どんな話なのか?と、つい興味がそそられます。
コンビニで働く30代の女性の日常がメインの作品は、読むと中々の問題作です。

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「コンビニ人間」の紹介

著者は村田沙耶香さんで2003年に群像新人文学賞を受賞し、デビュー後は色んなタイプの小説を書いています。「コンビニ人間」は2016年7月に文藝春秋から刊行され、その年の芥川賞を受賞しました。2017年の本屋大賞の9位にも選ばれ、販売部数も50万部を超えました。

村田沙耶香さんは主人公と同様にコンビニでのバイト経験が長く、そのバイト経験が小説の元になっています。受賞当時もコンビニバイトの仕事をしていたそうです。

物語の主人公・古倉恵子は36歳の独身女性で、大学時代にコンビニのアルバイトを始めて現在も続け生計を立てています。彼女は昔から変わった性格で、普通の人になるために色々と苦労してきました。

コンビニのアルバイトはマニュアル化され指示通りに働けば良く、流れに従っていれば「普通」にこなせる仕事は、恵子にとって働きやすかったのです。コンビニで働いて普通の人に見えるようになった恵子は、コンビニのバイトが適職と信じて就職せず働き続けています。

恵子にぴったりのコンビニのアルバイト生活は、主人公が30代になってもそうしていることで周囲から奇妙に思われる。いい年なのに何で正規の職に就かないのか、36歳になるのに結婚しないのか。普通の人と思われていたい彼女は、その声を無視できなくなってくる。

婚活目的で働きに来てクビになった元バイト仲間の男性・白羽とたまたま会い、彼と同居することにした恵子は普通の人でいられる方法を思いつく。白羽と形でも結婚すれば良いのでは?

恵子は白羽と表向きには同棲ということにして一緒に暮らし、就職するよう白羽に言われ彼女はコンビニのアルバイトを辞めることにする。

天職であるコンビニの仕事を離れ、彼女は果たして生きていけるのか?

普通の人ではない主人公

恵子は家族にもおかしいと思われる子どもで、その行動はとても奇妙なものでした。死んだ小鳥を見つけ友だちなどは可哀そうと悲しみますが、恵子は小鳥を焼き鳥にしようと言います。恵子の友だち同士が喧嘩をしていてそれを止めるために、恵子はスコップで殴ろうとします。

恵子の思考は独特であり、常識外れな言動と行動が目立つ。家族はなぜ恵子がそんな困ったことばかりするのか分からず、恵子は心配をかけないため普通の人になろうとする。

どうすれば普通の人になれるのか苦心していた恵子は、大学に入り始めたコンビニのアルバイトで普通になるチャンスを得る。

普通の人と見てもらえるコンビニのアルバイトで恵子の生活は良い方向に変わりますが、36歳になってもアルバイトのままで独身でいることが変わっていると見られるようになります。

コンビニの仕事こそが普通でいられる手段なのに、就職して結婚しなければ普通と思われないのか。

普通であることに強くこだわる恵子ですが、自分の選んだ最適な環境は他人に否定されます。

普通の人は異物を嫌う

「コンビニ人間」が問題作である理由に、普通でない恵子を普通の人々が追いつめていることがあります。

恵子の行動と考えは常人とは少々違っていて、その違いを普通の人々は異常だと感じている。普通の人と同じでない恵子は異物であり、和を乱す元と無意識に警戒している。

恵子がいつまでも就職せず結婚もしないことに、知り合いは正社員になった方が良い、良い人を紹介してあげると言う。それは深読みすれば親切心からではなく、異物の行動を正すため。

異物を受け入れられない人間の本質が、恵子をじわじわ追いつめる普通の人々に投影されています。

おわりに

普通でないことは生き辛い、と「コンビニ人間」を読めば読者は思い知らされます。
普通の人は異物を放っておいてくれない…ましてや矯正しようとさえする。
異物の恵子は異端を拒否する世界で、どんな生き方を選ぶのでしょう。


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