エログロ漫画「芋虫」で最後に見える赦しと愛


耽美的・猟奇的な作風の探偵小説で知られる「江戸川乱歩」。カルト漫画家としてコアなファンを獲得している「丸尾末広」。江戸川乱歩の小説世界を、丸尾末広が独自の風味を加えて世に送り出した作品があります。
それが今回ご紹介したい漫画、「芋虫」です。作品の設定はおぞましい部分があるので、人によって拒絶反応が出ることも。丸尾末広が描いている漫画だけあり、ジャンルとしてはエログロ漫画に属するかもしれません。少しグロ要素があるのは確かですが、この漫画は赦しと愛についても終わりに示されます。

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芋虫の著者はどんな人?

「芋虫」は江戸川乱歩が原作者であり、丸尾末広が絵を担当しています。江戸川乱歩は大正12年に「二銭銅貨」という作品で小説家デビューしました。名探偵の明智小五郎を主人公にした探偵小説、「孤島の鬼」などの同性愛要素を含んだ耽美的作風の小説で、現在でもなお人気のある日本探偵小説の大家です。
丸尾末広は「薔薇色ノ怪物」でデビューし、エログロ的な作風で知られ「少女椿」など一部で問題作とされる作品を発表しています。近年は江戸川乱歩の他、独特な小説家の話を原作にした漫画連載が多いです。

本の紹介

戦争で体に重い障害を負った夫が、自分の面倒を見る妻に虐待を受ける。「芋虫」は全体的に不自由な体になった夫を、妻が虐げるといった描写がある作品です。ショッキングな場面が多い江戸川乱歩作小説が原作なので、漫画にも精神的にも肉体的にも痛々しい場面が。画力の高さでも定評のある丸尾末広が描いているので、そういった場面はとても迫力があり目が離せません。
妻にいたぶられる夫が戦争で負った損傷はひどく、彼は手と足を全て失ってしまっている。自分を虐待する妻に夫は抗うすべがない。普通はこんな目にあったら、夫は妻を憎むだろう。でも、夫はそうではなかった。虐待をする妻と虐待される夫という歪んで壊れた関係に見える夫婦だが、最後の夫がとった行動と妻の心情で2人に愛は存在したのだと分かります。

あらすじ紹介

主人公であるのは傷痍兵である夫と、その妻です。夫は戦争によるケガで四肢を切断され、それだけでなく声と聴力まで失ってしまいます。見ることだけはできますが、自由に動けず芋虫のような姿に。妻は芋虫のようになり自分で何もできない夫を、傍目にはかいがいしく介護し暮らします。
夫は食欲と性欲は正常にあり、その2つに執着する。体が不自由になった夫を見ている内に、妻は夫に嗜虐的な感情を抱き夫の食欲と性欲を虐げの対象にするようになる。夫を人知れず虐待する日々を送る中、妻はある日自分を見る夫の目を…。
夫の悲惨な姿や暗い愛欲などの淀みが漂う作品ですが、相手を想う心なども描かれ終わりは切なさを感じます。

芋虫のみどころ

「芋虫」はそのタイトルのように芋虫状態になった夫が主人公であり、手足のない夫は地面に這うことしかできません。動く、聞く、しゃべる機能を奪われた人間の絶望や、不自由になった身でも食欲や性欲は正常にあることの矛盾した悲しみが場面から滲みでる。戦争に行く前は五体満足だった夫が、体の大部分の機能を失って帰ってきた妻の心のやるせなさ。妖艶で端正な丸尾末広の絵でエログロな世界観の中に、人間の抑え込まれた心の内が隠されています。
自分で何もできなくなった夫は、食べることと性交することが自分にできる行為。人間の原始的な欲望を丸出しにしているようでも、夫にとっては自分にできる数少ないこと。その行為を妻は虐待の一つに使っています。身体機能が制限された夫に残されたできることを阻む妻を、夫は憎みも恨みもしなかった。虐待行動がエスカレートした妻は、とうとうしてはならない罪を犯します。夫は物語の最後に妻の全てを「赦す」。不浄さをまき散らして進んだ物語は、最後に夫の行動で浄化されます。

おわりに

四肢のない人間が描かれている漫画なので、読む人を選ぶ作風の漫画ではあります。エログロ漫画に入る作品ですが、人間心理など深く伝わる物語です。


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