このミステリーがすごい!でなぜか1位?のホラー短編集「独白するユニバーサル横メルカトル」


ホラー漫画家にはスプラッタ―な描写で有名な「富江」シリーズの伊藤潤二さんのように、読んだ人に強烈なトラウマを植え付ける作家がいます。

同じように、ホラー小説家にも読者のトラウマを増産している作家がいます。
今回ご紹介するホラー小説短編集「独白するユニバーサル横メルカトル」は、ホラー小説界のトラウマ製造機とも言える平野夢明さんという方の作品です。

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独白するユニバーサル横メルカトルの紹介

「独白するユニバーサル横メルカトル」は2006年に出版された短編集になります。表題作の他には7編の作品を収録。表題作はホラーアンソロジー「異形コレクションシリーズ」に寄稿されたもので、他の作品もどちらかというとホラー小説寄り。

しかし、「独白するユニバーサル横メルカトル」は2006年の日本推理作家協会賞で短編部門賞をもらい、同作品を収めた短篇集は2007年の「このミステリーがすごい!」国内部門において1位をもらうなどミステリー小説として評価を受けています。

読者に衝撃を与える作風なホラー小説家の本でも、ミステリー系に見られる内容ならトラウマも浅いのでは?そう油断していると、痛い目を見る。

ホラー小説賞受賞の冠につられて本作を手に取り、毒たっぷりの平野夢明さんワールドにやられた人は少なくないでしょう。

表題作のストーリーは地図が語り手

短篇集のタイトルになっている「独白するユニバーサル横メルカトル」は、ちょっと変わった存在が主人公になっています。語り手となる「私」は人間ではなく、自我を持っている市街地道路地図帖です。

「私」は仕事熱心で持ち主の人間の仕事がスムーズにいくよう、細かい気配りができる献身的な地図帖。持ち主はタクシー運転手をしていて、「私」は持ち主の仕事に役立つルート情報を教えてあげていた。

タクシー運転手はストレスが多い職業で、心が疲れ果て「私」の持ち主は狂っていく。持ち主は連続殺人鬼と化し、「私」には持ち主の殺した死体が埋められた場所が描きこまれていくようになりました。

人殺しに手を染めた持ち主は、やがて事故によりこの世を去る。「私」は新しい所有者へと渡り、次は救急隊員の息子が持ち主に。この息子も先代の持ち主と同じ道へ行ってしまいます。持ち主に恵まれない地図帖です。

他の作品も強烈作品ばかり

表題作は殺人鬼が主人の自我を持つ地図帖と、強烈な設定をしています。他に収録されている話も、強烈な設定のホラー小説ばかりです。2作品ほどご紹介したいと思います。

無垢の祈り

小学生の少女・ふみは複雑な家庭環境におかれている。両親と暮らしているが父親は義理の親であり、血のつながらない彼女に暴力を振るいます。母親は実の親だけれど宗教に走り、精神的安定を欠いていてふみを守ってくれる存在ではありません。

家庭のことで学校でも孤立しイジメを受けているふみに居場所も救いもない。そんな彼女の家の近所で連続殺人事件が起きる。被害者の1人はふみを襲おうとした男だった。自分を傷つけようとした人間を殺した殺人鬼に、ふみは会ってみたいと思うようになります。

ふみは殺人鬼と接触しようとするが…。

怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男

ある組織で拷問係を仕事にしている男・MC。MCは強迫性障害があり仕事の苦痛を紛らわすためか、夢の世界へと逃げることで精神を保っている。ある時、新しい拷問相手として、顔や体が傷だらけで歪になっている女性が送られてきました。

彼女は凄惨な責め苦を受けても恐れもせず、数多くの人間を拷問してきたMCはとまどいます。精神の不安定さから普段のように夢の世界へと逃げるが、MCの心の中は乱されていく。苦痛に怯えない彼女は、MCに会いたくて自ら拷問されに来たのです。

MCと彼女の関係とは…。

どちらも精神的・肉体的な痛みが多い作品なので、読む時は覚悟して読みましょう。

おわりに

読めばトラウマになってしまうことが多い平野夢明作品。とんでもない作風が好きな人には、たまらなく嵌ってしまう世界観です。「独白するユニバーサル横メルカトル」で、狂気的な平野夢明ホラーの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。


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