おかしいのに憎めないクズ変人揃いの小説「デブを捨てに」


現在公開されている映画「Diner ダイナー」を、ご覧になった方はいるでしょうか。この映画に出てくる登場人物は、どれも癖のあるまともでない変人ばかり。原作を書いた小説家・平野夢明さんは、普通の感性では思いつかない常識外の変わった人間を表現するのが得意な作家です。

今回ご紹介する本「デブを捨てに」は、平野夢明さん毒入り変人をたっぷり集めた短篇集です。表紙からしてインパクトのある「デブを捨てに」は、中身もかなりインパクト大な本になっています。

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「デブを捨てに」の紹介

表題作を含めて収録されている作品4編は、「オール読物」に2011年から2012年に読み切り作品として掲載されました。他の3編は「マミーボコボコ」、「いんちき小僧」、「顔が不自由で素敵な売女」と、表題作に劣らない謎なタイトルばかり。

「デブを捨てに」は借金で首が回らないロクデナシ系の男が、借金返済を待ってもらうためにデブな女性を捨てに行くお話です。残る3編についても登場人物は、常識から外れた部類の人間ばかり。

平野夢秋さんは人間の狂った部分にスポットをあて、狂気を際立たせた設定にしている話が多い。この短篇集もおかしい人間がキーワードになっていて、人間のクズな部分に読後は食傷気味にされます。

表題作についてはデブな女性を捨てに行くだけの奇妙な旅

先に少しあげましたが、「デブを捨てに」のストーリー展開はタイトルそのままです。主人公は借金をしている男で返済期日までに返す金を工面できず、金貸しの事務所に連れていかれました。その場で男は定番のように、ボコボコにされる。

締められた男が金貸しに腕をやるか、それともデブかどちらか選べと変な選択を迫られます。腕なんて誰だって折られたくないもの。迷わず男は「デブ」を選びます。

借金返済を延ばしてもらう条件の「デブ」は、物凄く太った女性を捨てに行くというもの。そして男とデブ女性と旅路がはじまります。なぜ金貸しは男に女性を捨てに行かせたいのか?女性は金貸しにどういった存在だったのか?

とりあえず女性の並外れた食欲ぶりでフードファイトしながら、男はデブ女性と2人で旅をします。

ブラックな3編の物語

表題作は人間を捨てに行くという内容ですから、はっきり言うとブラックなお話です。他の3編の物語も内容はブラックなお話になります。

マミーボコボコ

ある男が知人のおっさんから頼まれ、おっさんが捨てた娘の嫁ぎ先へと一緒に会いに行きます。娘は山ほど子どもを産んでいて、大家族の生活に密着するテレビ番組の一環でおっさんとの感動の再開を演出しようとしていたのです。

娘家族に密着した番組は世間に受けて、家族には大金が入るようになる。金回りが良くなっていく娘家族だったが、子どもの1人が事故を起こして状況は一転していきます。

いんちき小僧

空腹に耐えかねた主人公の「俺」がコンビニでキャラメルを万引きしようとし、店員の女性に捕まってしまいます。店員は彼を公園へと連れ一発殴らせるなら、警察を呼ばず罪を許してやると持ちかけました。

そこへ2人のやり取りを見ていた男が、主人公にとある提案をしてきます。男は偽物の大麻を息子と作って売っていて、主人公はその仕事を手伝うことになり流れで一緒に生活をする。

男のしている商売を考えたのはまだ子どもである息子で、この息子はさえない父と違い頭が回る。本当の親子とは思えないほどに。

彼らのしている商売はやがて本物の麻薬を売る危ない人に見つかり…。

顔が不自由で素敵な売女

酔っぱらった主人公の「俺」は場末の寂れたヘルス店で、醜い容姿の女性にサービスを受けます。女性が何だか気に入ったのか主人公は、自分が働く飲み屋に彼女を誘って連れて行く。

飲み屋のオーナー・主人公・女性は仲良くなり、女性は飲み屋の常連客になります。

女性は仕事をしていないDV男を養っていて、彼女の頭髪は男に毟られて禿げていてカツラをかぶっている。客にも虐げられることのある女性ですが、あっけらかんとし暗さを感じさせません。

「ウチダ」という男がある日に来店したことを境に、飲み屋に集う日常が壊れていきます。

ウチダはオーナーの知られたくない過去を知る人物で、オーナーはウチダが来ることで追いつめられていく。女性もDV男からの暴力が悪化し、ひどい傷を負い店をクビになってしまう。

オーナーの過去には一体何があったのか?凄惨な暴力を受ける女性の行く末は?

ちなみに主人公が働いているお店の名前が面白いです。名前は「でべそ」。

おわりに

にっこり笑うオヤジ顔の表紙が目立つ「デブを捨てに」は、クズでロクデナシな人間が
多く暴力描写も過多で一般向けはしないだろうタイプです。

でも読んでいくと人物たちの憎めない部分や、少し見せる心の優しさに魅せられ終わりまであっという間に読めてしまいます。


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